
銀行口座が凍結されたり、金融機関から不審な取引について問い合わせを受けたり、警察から連絡があったり…そうした経験は本当に焦ります。
特にマネーロンダリングの疑いで疑われたときは、自分が何も悪いことをしていないはずなのに、どう対処したらいいのか分からず、不安になってしまいますね。
実は、正当な理由のある取引でも、パターンや金額によっては疑われてしまうケースが多く存在します。
この記事では、マネーロンダリングで疑われる理由、そして疑われたときの適切な対処法について、最新の統計データと実際の事例をもとに詳しく解説します。
正しく対応することで、疑いを晴らし、安心を取り戻すことができます。
マネーロンダリングで疑われるのは、疑いの余地のある取引パターンだから

なぜ正当な理由のある取引でもマネーロンダリングの疑いをかけられることがあるのでしょうか。
それは、金融機関が法的に義務づけられた「疑わしい取引」の報告ルールに基づいて判断しているからです。
日本における疑わしい取引の報告件数は、2022年に過去最多の58万3317件に達しました。
これは前年比で5万3167件も増えており、金融機関がより厳しく取引をチェックしていることを示しています。
つまり、あなたの取引パターンが「疑わしい」と判定される基準が、年々厳しくなっているのです。
金融機関が疑わしいと判断する主な理由は、以下のようなものです。
- 通常と異なる金額や頻度での振込
- 海外への送金や受け取り
- 現金での大量の出入金
- 複数の口座間での短期間の資金移動
- 業種や職業に合致しない取引内容
- 暗号資産への出金や入金
これらの行為そのものは違法ではありませんが、犯罪者がマネーロンダリングに使う手口と似ているため、金融機関は慎重に対応する必要があります。
その結果、正当な理由のある取引でも疑われてしまうことがあるのです。
なぜ暗号資産の取引が特に疑われやすいのか
特に注意が必要なのが暗号資産を使った取引です。
2023年の警察庁統計によると、詐欺事件の被害総額は452億6000万円に達しており、その中で暗号資産が資金洗浄の主要手段として活用されています。
具体的には、以下のような事例があります。
- SNS型投資詐欺による被害額640.14億円のうち、9.9%が暗号資産関連
- SNS型ロマンス詐欺による被害額236.5億円のうち、17.7%が暗号資産関連
- 2023年の暗号資産関連の不正受取額は、BTCで約54.8億円、ETHで約67億円
これらの数字から分かるように、犯罪者は暗号資産を使った資金移動を好みます。
暗号資産は匿名性が高く、追跡が難しいという特性があるため、マネーロンダリングに最適だからです。
その結果、金融機関から暗号資産への出金や入金があると、特に厳しくチェックされやすくなっています。
マネーロンダリングで疑われたときの対処法
もしマネーロンダリングの疑いで取引を止められたり、問い合わせを受けたりした場合、どう対応したらいいでしょうか。
重要なのは、落ち着いて、誠実に、そして正確に対応することです。
第1段階:金融機関からの問い合わせに応じる
銀行や暗号資産取引所から疑わしい取引についての問い合わせが来た場合、最初にすべきことは、その問い合わせに対して真摯に応じることです。
対応のポイントは以下の通りです。
- 問い合わせを無視しない(無視すると疑惑がより深まります)
- 感情的にならず、冷静に説明する
- 取引の具体的な理由を明確に説明する
- 必要に応じて証拠となる書類を用意する
- 複数の問い合わせが来た場合は、弁護士に相談する
例えば、大口の送金について聞かれた場合は、「○○の購入のためのお金です」「○○会社への支払いです」というように、具体的な理由を説明することが重要です。
可能であれば、契約書や請求書などの証拠書類を用意して提示することで、信頼性が大幅に高まります。
第2段階:自分の取引記録を整理する
金融機関から問い合わせを受ける前に、または受けた後でも、自分の取引記録を整理しておくことは非常に重要です。
以下の情報をまとめておくことをお勧めします。
- 過去3年分の全取引の記録(日付、金額、相手先)
- それぞれの取引の具体的な理由
- 給与明細や事業所得の証拠
- 不動産や車などの資産を購入した場合の契約書
- 海外への送金がある場合は、その理由と関係者の情報
特に注意が必要なのが、複数の口座間での資金移動です。
自分の複数の口座間の移動であっても、見方によっては「資金の出所隠蔽」と見えることがあります。
その場合は、「個人の口座Aから法人口座Bへの資金移動」「投資用口座への移動」というように、移動の理由を明確にしておくことが重要です。
第3段階:警察からの連絡に対応する
もし警察から取引について問い合わせられた場合は、弁護士に相談することを強くお勧めします。
警察の調査に対しては、無視は絶対に避けるべきですが、同時に無理に説明しようとして、かえって疑いを深める可能性もあります。
弁護士がいることで、以下のようなメリットがあります。
- 自分の権利を守りながら、適切に説明できる
- 言い間違えによる誤解を防げる
- 必要に応じて法的なアドバイスを受けられる
- 警察との交渉をスムーズに進められる
特に重要なのは、自分が何も違法なことをしていなくても、警察の「疑問」に対して不用意な発言をすると、かえって疑いが深まる可能性があるということです。
そのため、弁護士を通じて対応することが、最も安全です。
第4段階:金融機関に信頼関係を再構築する
疑いが晴れた後も、金融機関との信頼関係を再構築することは重要です。
なぜなら、一度「疑わしい顧客」と判定されると、その後の取引もより厳しくチェックされる可能性があるからです。
信頼関係を再構築するために、以下のことに注意しましょう。
- 以降の取引は、できるだけ明確な記録を残す
- 大口の取引がある場合は、事前に金融機関に説明しておく
- 定期的な口座確認や取引確認の連絡には、速やかに応じる
- 疑わしいと思われるような取引パターンは避ける
マネーロンダリングの疑いがかけられるケース:3つの具体例
それでは、実際にマネーロンダリングの疑いがかけられやすい具体的なケースを見てみましょう。
これらのケースを理解することで、自分の取引を見直す際の参考になります。
ケース1:オンライン銀行口座からの暗号資産取引所への大口送金
警察庁のデータによると、オンライン銀行口座から盗まれた87億3000万円のほぼ半分が暗号資産取引所の口座に送金されました。
これは、詐欺の被害金や盗難金が、素早く暗号資産に変換されてから海外に流出している実態を示しています。
そのため、銀行口座から暗号資産取引所への送金があると、金融機関は特に注視します。
たとえあなたが正当な理由で投資をしているとしても、疑われる可能性があります。
対策としては、以下のことを心がけましょう。
- 暗号資産投資をする場合は、その理由を明確にする
- 初めての取引所への送金の場合は、事前に金融機関に説明しておく
- 送金額は、自分の資産規模に見合った金額にする
- 複数の送金をする場合は、ある程度の間隔を空ける
ケース2:複数の口座間での短期間の大口資金移動
別の典型的なケースは、複数の口座間での短期間の大口資金移動です。
例えば、A銀行から1000万円を引き出して、その翌日にB銀行に1000万円を預金するというようなパターンです。
これは、「資金の出所を隠すために、複数の口座を経由させている」と見られてしまいます。
実際には、「住宅ローンの借り換えのため」「投資資金の整理」など、正当な理由があるかもしれません。
しかし、金融機関の立場からすると、出所や使途が不明確な大口資金の移動は、マネーロンダリングの典型的なパターンに見えてしまうのです。
対策としては、以下のことが有効です。
- 複数の口座間の移動をする際は、事前に金融機関に理由を説明する
- 移動の理由を明確にする証拠書類を用意しておく
- 短期間に複数の移動をしない(どうしても必要な場合は説明を用意する)
- 移動の期間を少し延ばすことで、スムーズに見えるようにする
ケース3:海外への送金と暗号資産取引の組み合わせ
国際的な送金と暗号資産取引の組み合わせも、特に疑われやすいパターンです。
例えば、海外の知人に送金するために暗号資産を使う、海外の暗号資産取引所に口座を開いて取引するなどです。
国際的な送金が疑われやすいのは、以下の理由があります。
- 送金の追跡が難しい
- 複数の国の金融機関を経由するため、記録が分散しやすい
- 海外の暗号資産取引所は、日本の規制が及びにくい
- 大型詐欺事件や贈賄事件では、海外送金がよく使われる
実際、2024年1-8月の詐欺被害は前年を大幅に上回るペースで増加しており、その多くが海外への資金流出を含むケースです。
そのため、金融機関は海外への送金に対して、より慎重にチェックするようになっています。
対策としては、以下のことが重要です。
- 海外への送金の際は、相手先の具体的な情報(名前、住所、銀行情報など)を明確にする
- 送金の理由を「返金」「投資」「寄付」など、具体的に説明する
- 暗号資産を使った国際送金は避ける(特に初回は)
- 海外の暗号資産取引所への送金は、事前に金融機関に相談する
マネーロンダリングで疑われないための予防策
最後に、マネーロンダリングで疑われないための予防策をまとめておきましょう。
疑われた後に対処するより、最初から疑われないようにすることの方が、ずっと簡単です。
日頃から「疑われにくい」取引パターンを心がける
金融機関は、以下のような取引パターンを「疑わしい」と判定しやすいため、これらを避けることが重要です。
- 通常の給与や事業収入と無関係な大口入金
- 入金直後の出金(特に現金化や海外送金)
- 複数の口座間での小分けされた振込(「スプリッティング」と呼ばれる手法)
- 理由が不明確な頻繁な大口取引
- 取引履歴の少ない新しい口座への大口送金
金融機関との「コミュニケーション」を大切にする
最も重要な予防策は、金融機関とのコミュニケーションを大切にすることです。
特に、通常と異なる取引をする場合には、事前に説明しておくことで、疑いを大きく減らせます。
例えば、以下のようなシーンでは、事前に相談することをお勧めします。
- 100万円以上の大口入金や出金がある場合
- 海外への初めての送金をする場合
- 暗号資産取引所への大口送金をする場合
- 事業内容が変わる場合(給与所得から事業所得への変更など)
- 海外への移住や転職で、取引パターンが大きく変わる場合
ダウンロードして保管:マイナンバーカードと口座申請
また、自分の本人確認書類や取引履歴を常に整理しておくことも重要です。
金融機関から確認を求められたときに、すぐに提出できるようにしておくことで、信頼関係を損なわずに済みます。
特に、以下の書類は常に整理しておくことをお勧めします。
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 住所確認書類(公共料金の領収書など)
- 収入を示す書類(給与明細、税務申告書など)
- 資産を示す書類(不動産登記簿、株式口座など)
- 大口取引の理由を示す書類(契約書、請求書など)
まとめ:マネーロンダリングで疑われたときは、冷静に、誠実に対応しよう
マネーロンダリングで疑われるのは、決して珍しい出来事ではありません。
2022年の疑わしい取引報告件数が過去最多の58万3317件に達したことからも分かるように、多くの正当な取引が「疑わしい」と判定されています。
もしあなたがマネーロンダリングの疑いで疑われたときは、以下の対応を心がけましょう。
- 金融機関からの問い合わせには、誠実に応じる
- 取引の具体的な理由を、明確に説明する
- 必要に応じて証拠書類を用意する
- 警察からの連絡を受けた場合は、弁護士に相談する
- 疑いが晴れた後も、金融機関との信頼関係を大切にする
正当な理由のある取引であれば、適切に説明することで、疑いを晴らすことができます。
重要なのは、「疑われたこと」ではなく、「疑いに対して、どう対応するか」ということです。
落ち着いて、誠実に対応することで、あなたの信頼を取り戻すことができます。
背中を押す一言:疑いは晴らせる。正当な理由がないか、もう一度確認してみよう
もしあなたが、今この瞬間にマネーロンダリングの疑いで悩んでいるのなら、焦る必要はありません。
多くの人が、同じような状況を経験し、乗り越えています。
今できることは、以下の3つです。
- 自分の取引が正当な理由に基づいているか、もう一度確認する
- その理由を、金融機関に説明するための準備をする
- 必要に応じて、弁護士に相談する
あなたの取引に正当な理由があるのなら、その理由を丁寧に説明することで、疑いを晴らすことができます。
不安を感じている今だからこそ、一歩踏み出してみませんか?
その一歩が、あなたを安心へと導いてくれるはずです。