
妊娠中に喘息やアレルギーの症状がある場合、モンテルカスト(シングレアなど)の使用について不安になるのは当然ですね。 治療が必要だけれど、赤ちゃんへの影響も心配。 この記事では、モンテルカスト妊娠中使用の安全性について、日本国内のガイドラインと海外の医学的根拠を詳しく解説します。 医師との相談をする際の判断材料となる情報を整理して、あなたの不安を少しでも軽くできることを目指しています。
妊娠中のモンテルカスト使用は原則禁忌だが、有益性が危険性を上回る場合に限定使用が推奨される

モンテルカストについて結論から申し上げます。日本では妊娠中のモンテルカスト使用は原則禁忌とされていますが、喘息コントロール不良など有益性が危険性を上回る場合に限定投与が検討される可能性があります。
これは相互に矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、実際の医療現場ではこのような判断が行われています。
まず重要なのは、妊娠中の喘息悪化自体が母子にもたらすリスク(低酸素血症、早産、低体重児出生、先天異常の増加)があり、これが薬による治療効果と比較されるということです。
モンテルカストは動物実験では催奇形性がほぼ問題ないとされており、米国FDAではカテゴリーB(動物実験でリスクなし、ヒトデータ不足)に分類されています。
ただし、ヒトでの安全性データが不十分であることが、日本で原則禁忌とされている主な理由です。
重要ポイント:妊娠中のモンテルカスト使用について「絶対に安全」とも「絶対に危険」とも言い切ることはできません。個々の患者の状況(喘息の重症度、コントロール状況、他の治療選択肢など)によって、医師が判断する必要があります。
なぜこのような判断になるのか?医学的根拠を徹底解説
日本でモンテルカストが妊娠中禁忌とされている理由
日本の医薬品添付文書と妊娠・授乳婦向けのガイドラインでは、モンテルカストについてヒトの安全性データが十分でないため、妊娠中は原則禁忌と記載されています。
これは予防原則に基づいた慎重な判断です。
日本の医療は、確実なエビデンスがない場合は使用を避けるという保守的なアプローチを取っています。
データが不足している具体的な理由
- 妊娠中の薬剤使用に関する大規模なランダム化比較試験(RCT)の実施は倫理的に困難
- 人間での長期的な追跡調査データが限定的
- モンテルカストは比較的新しい薬(1990年代後半に開発)
- 妊娠レジストリなどの自発的報告システムでも症例数が限定的
動物実験での安全性データ
動物実験の結果は、妊娠中の薬剤安全性評価において重要な初段階です。
モンテルカストの動物実験では、催奇形性はほぼ報告されていないという点は、安全性を示唆する材料となっています。
しかし、動物実験で安全とされたからといって、必ずしも人間にも安全とは限りません。
種差による代謝の違いや、用量設定の違いなど、多くの要因があるためです。
米国FDAカテゴリーBの意味
米国FDAでは薬剤を妊娠中の安全性により5つのカテゴリーに分類しており、モンテルカストはカテゴリーBに該当します。
FDA分類の概要:
- カテゴリーA:妊娠中の安全性が確立している
- カテゴリーB:動物実験では問題なし、ヒトデータ不足
- カテゴリーC:動物実験でリスク、ヒトデータなし、または両者ともデータ不足
- カテゴリーD:ヒトでリスクの証拠あり、ただし有益性が上回る場合に使用可能
- カテゴリーX:妊娠中は禁忌
つまり、モンテルカストはカテゴリーAではなく、予防的措置がより必要なカテゴリーBに分類されているということです。
海外での市販後調査データ
モンテルカストが長年使用されてきた米国やヨーロッパでは、市販後の調査データが蓄積されています。
現在までのところ、妊娠中にモンテルカストを使用した症例から、明確な胎児リスクの報告は多くないとされています。
ただし「報告がない」ことが「安全である」ことを確実に示すわけではありません。
稀な副作用は報告されにくいという統計的なバイアスも存在するからです。
国際的なガイドラインでの評価
NAEPP(全米喘息・アレルギー・感染症研究所)などの国際的なガイドラインでは、異なるアプローチが示されています。
一般的なガイドラインの立場:
- 吸入ステロイド(ブデソニド)が最初の選択肢
- 短時間作用β2刺激薬が急性発作時の治療薬
- モンテルカストは吸入ステロイドと比較するとエビデンスが少ないが、既に使用中でコントロール良好なら継続可能と評価する場合もある
つまり、妊娠中に新たに開始するより、既に使用していて効果が出ている場合の継続の方が、医学的に検討しやすいという考え方もあります。
妊娠中の喘息悪化がもたらすリスク
重要な視点として、モンテルカストを使用しない場合のリスクも考える必要があります。
妊娠中の喘息悪化が原因で、低酸素血症が生じると早産や低体重児出生のリスク増加が報告されています。
妊娠中の喘息悪化に関連する合併症:
- 早産(37週未満の出産)
- 低体重児出生(2500g未満)
- 妊娠中の高血圧疾患(妊娠高血圧症候群)の増加
- 先天異常のわずかな増加(おそらく低酸素血症による)
これらのリスクを鑑みると、喘息を適切にコントロールすることが、母子の健康にとって極めて重要だということが理解できます。
妊娠中のモンテルカスト使用に関する具体的な状況と判断例
具体例1:既にモンテルカストで喘息がコントロールされている場合
妊娠前からモンテルカスト(シングレアなど)を使用していて、喘息症状がよくコントロールされている患者の場合を考えてみましょう。
医学的な考え方:
この場合、医師が継続使用を判断する可能性があります。
理由としては:
- 既に動物実験で安全性が示唆されている
- 中断による喘息悪化のリスク(実証済みの危険性)と、継続による不明確なリスクを比較すると、継続の方が有益と判断される可能性
- 国際的なガイドラインの一部で継続可と述べられている
患者としては、医師に「妊娠を計画しているため、現在の治療について相談したい」と事前に相談することが重要です。
具体的な相談内容の例:
- 妊娠中にモンテルカストを継続してもよいか
- 妊娠中に変更可能な代替薬があるか(吸入ステロイドなど)
- いずれにしても、喘息コントロールを維持するための戦略
- 妊娠中のフォローアップ頻度と緊急時の対応
具体例2:妊娠中に新たに喘息症状が出現した場合
妊娠前には喘息がなかったのに、妊娠中に初めて喘息様の症状が出現した場合があります。
(妊娠中はホルモン変化により、喘息症状が悪化する患者が約30~50%いるとされています)
医学的な考え方:
この場合、まず吸入ステロイド(ブデソニドなど)が最初の選択肢となります。
- ブデソニドは妊娠中の喘息治療で特に推奨されている
- FDA分類ではカテゴリーAまたはB相当で、より多くの安全性データがある
- モンテルカストはこれらの標準治療で十分にコントロールできない場合の追加選択肢
したがって、「妊娠中に新たに喘息が出た場合、最初からモンテルカストを選択する」というシナリオは、現代の医療ガイドラインではあまり推奨されていません。
具体例3:妊娠後期(妊娠24~36週)に喘息が悪化した場合
妊娠後期に喘息悪化が顕著になることは医学的に知られています。
この時期の喘息コントロール不良は、早産リスクと関連があります。
医学的な考え方:
妊娠後期の喘息悪化がステロイド吸入薬で十分コントロールできない場合、モンテルカスト追加投与が医師により検討される可能性が高まります。
- 喘息悪化による低酸素血症のリスクが、妊娠後期は特に大きい
- この時期は胎児の臓器形成がほぼ完了しており、催奇形性のリスク(絶対的なものではないが)は比較的低い
- 有益性と危険性の天秤が、モンテルカスト使用に傾く可能性が高い
このような判断は、個々の患者の喘息の重症度、コントロール状況、他の治療選択肢の有無などを総合的に判断した上でなされます。
妊娠中にモンテルカストについて医師と相談する際のポイント
相談前に準備すること
医師との相談をより実りのあるものにするために、事前に準備できることがあります。
準備すべき情報:
- 妊娠前の喘息の重症度と治療内容(用量含む)
- 現在の妊娠週数と予定日
- 妊娠中の喘息症状の変化(改善しているか、悪化しているか)
- 現在使用中の全ての薬剤(モンテルカスト以外も)
- モンテルカストを中止した場合に予想される症状
- 家族の喘息やアレルギー歴
医師に質問すべき項目
医師との相談時に、以下のような質問をすることで、より詳しい情報が得られます。
- 「妊娠中もモンテルカストを使用することが、私の場合は最適ですか?」
- 「中断した場合、どの程度の喘息悪化が予想されますか?」
- 「代替となる治療法(吸入ステロイドなど)にはどのような選択肢がありますか?」
- 「妊娠中にモンテルカストを使用する場合、どのような副作用に注意すればよいですか?」
- 「妊娠中のフォローアップはどの程度の頻度で必要ですか?」
- 「分娩時や授乳期間中の治療について、事前に相談できますか?」
重要な注意:医師の指示を受けずにモンテルカストを自己中止することは避けてください。喘息の急性悪化につながる可能性があり、これは母子の健康にさらに大きなリスクをもたらします。
妊娠中の喘息管理の一般的な原則
推奨される治療の優先順位
国際的なガイドラインでは、妊娠中の喘息管理について一定の優先順位が示されています。
第一選択肢:吸入ステロイド
ブデソニドなどの吸入ステロイドが、妊娠中の喘息治療の基本とされています。
理由としては:
- FDA分類でカテゴリーAまたはB
- 最も多くの安全性データがある
- 局所作用(肺)であり、全身への影響が最小限
- 喘息コントロール効果が高い
第二選択肢:短時間作用β2刺激薬(サルブタモールなど)
急性の喘息発作時に使用されます。
安全性データが豊富で、妊娠中の使用が一般的に認められています。
第三選択肢その他の薬剤(モンテルカスト含む)
これらは吸入ステロイドと短時間作用β2刺激薬で十分にコントロールできない場合の追加選択肢です。
妊娠中の喘息管理で重要な生活上のポイント
- 既知のアレルゲンや喘息のトリガーを避ける
- インフルエンザやCOVID-19などの感染予防
- 妊娠中の適切な運動と休息
- 定期的な医療機関での受診と喘息コントロール状況の評価
- 喘息が悪化した場合、すぐに医師に相談する体制の構築
妊娠中のモンテルカスト使用についての総括
モンテルカスト妊娠中使用の問題をまとめると、以下のようになります。
事実として確認されていること
- 日本では原則禁忌:ヒトでのデータ不足が理由
- 動物実験では安全性が示唆:催奇形性はほぼ報告されていない
- 米国FDAではカテゴリーB:一定の使用実績がある
- 海外での市販後調査では明確なリスク報告が限定的:ただしデータ不足の可能性も
医学的な判断の枠組み
妊娠中のモンテルカスト使用については「絶対にYesまたはNo」ではなく、個々の患者について:
- 喘息の重症度と現在のコントロール状況
- 妊娠の時期(初期か後期か)
- 代替治療選択肢の有無
- 喘息悪化時のリスク(母子健康への影響)
- モンテルカスト使用時の不確実性
これらを総合的に判断して、有益性が危険性を上回るか否かを医師が評価する必要があります。
患者として取るべきアプローチ
- 医師の指示に従う(自己判断での中止は避ける)
- 妊娠計画時から産科医と内科医(または呼吸器科医)の連携相談
- 妊娠中の定期的なフォローアップ
- 喘息症状の記録と医師への報告
- 緊急時の対応体制の確認
背中を押します:あなたの判断は医師サポートのもとで
妊娠中にモンテルカスト使用について不安になるのは、とても自然なことです。
赤ちゃんの健康を心配する気持ちは、良い親としての証です。
しかし重要なことは、この判断は医師と一緒に行うべきということです。
ネットで見た情報や「周囲がこう言っている」という話だけで判断するのではなく、あなたの具体的な医学的状況を知る医師の専門的な意見を聞くことが最も安全です。
妊娠計画をしているなら、できるだけ早く医師に相談してください。
既に妊娠していて、モンテルカスト使用について迷っているなら、今すぐ医師に相談することをお勧めします。
妊娠中の喘息コントロールは、赤ちゃんの健康と、あなた自身の健康の両方に関わる大切な課題です。
医師と一緒に、最善の治療方針を見つけ出してください。
あなたと赤ちゃんの健康を守るために、医学的な専門家のサポートを積極的に活用してくださいね。