
お子さんの歯並びが気になって矯正治療を始めたものの、「治療期間が長いし費用もかかるから、第一期だけでやめられないかな」と考えたことはありませんか?
小児矯正の第一期治療を途中でやめることは、一見すると経済的に見えるかもしれませんが、実は後々の治療をより複雑で費用のかかるものにしてしまうリスクがあります。
この記事では、第一期治療がなぜ必要なのか、やめるとどのような問題が生じるのかについて、詳しく解説していきます。
小児矯正の第一期治療は、やめずに継続することが基本です

小児矯正の第一期治療(通常6〜12歳頃の混合歯列期に行われる)を途中でやめると、顎の成長誘導や咬合改善の効果が不十分となり、後々の第二期治療で抜歯や長期矯正が必要になるリスクが大幅に高まります。
したがって、矯正治療の専門医からは、第一期治療の継続が原則推奨されています。
多くの親御さんが「混合歯列期(6〜12歳)」が治療の最適時期だと認識しており、72.6%の保護者がこの時期を選択しているのは、それだけ重要な段階だからなのです。
第一期治療を理解する:目的と治療内容
第一期治療とは何か
第一期治療は、乳歯と永久歯が混在する「混合歯列期」に行われる矯正治療の基礎段階です。
通常、6歳から12歳頃を対象として、顎骨の成長を誘導し、永久歯が正しい位置に生えるための準備を行います。
この時期の治療では、大人の矯正治療(第二期治療)を軽減または簡素化するための「下準備」が主な目的となります。
早期に適切な介入を行うことで、後々の矯正負担を大幅に減らすことが可能になるのです。
第一期治療の実際の開始時期
保護者を対象とした調査(2023年、n=1,003)によると、本格的な矯正治療の開始時期は以下のとおりです。
- 8歳:19.5%(最多)
- 7歳:18.4%
- 9歳:16.9%
- 6歳:16.3%
小学校入学後から治療を始めるケースが主流となっており、お子さんが学校生活に適応した後のタイミングで始める親御さんが多いことが分かります。
第一期治療の期間と費用
第一期治療の治療期間は約1〜2年で、通常は月1回程度の通院で経過観察と装置調整を行います。
治療内容としては、以下のようなものが一般的です。
- 装置装着(45.9%の家庭が選択)
- クリーニング(45.9%)
- マウスピース矯正(14.7%)
費用面では、第一期単独で30〜50万円程度(装置代として20〜40万円を含む)が目安となります。
ただし、総額では第二期治療を合わせて80〜100万円程度になることが多いため、後述する自治体補助の活用も重要です。
なぜ第一期治療を途中でやめるとリスクが高まるのか
顎の成長誘導が不完全になる問題
第一期治療の最大の目的は「顎の骨格を拡大し、正しい方向へ成長を誘導する」ことです。
この治療を途中でやめてしまうと、本来であれば進むはずの顎の拡大が不完全なまま止まってしまいます。
顎が十分に成長していない状態で第二期治療(永久歯列期の本格矯正)に進むと、以下のような問題が生じます。
- 永久歯が並ぶスペースが不足し、抜歯の可能性が高まる
- 歯を並べるために複数の歯を健康な状態で抜く必要が出る
- 結果として、第二期治療の期間が延長される
- 治療にかかる総費用が増加する
つまり、第一期治療を惜しむことで、後々より大きな負担を背負うことになるのです。
永久歯列期の咬合調整が複雑化する
第一期治療が不完全に終わった場合、永久歯列期に入った時点での歯並びや咬み合わせは、理想的な状態に達していません。
この状態から本格的な矯正を開始する必要があるため、以下のような複雑性が増します。
- 治療計画の難度が上がる:第一期で顎を整えていないため、第二期ではより精密な調整が必要
- 装置装着期間が長くなる:本来なら1〜2年で済む第二期が3年以上に延長される可能性
- 複雑な装置が必要:ワイヤー矯正やマルチブラケット装置など、より負担の大きい装置を長期間使用
結果として、お子さんの学校生活や日常生活への影響も大きくなってしまうのです。
小児の不正咬合増加と予防の重要性
近年、子どもの歯並びに関する問題が増加しています。
5歳児の不正咬合率は、平成18年の2.45%から令和6年には4.64%へ、約2倍に増加しています。
この現象に対して、歯科医師の92.8%が「歯並びが悪い子どもが増加している」と認識しており、早期の第一期治療の重要性がますます高まっているのです。
予防的に第一期で対処することで、より深刻な歯並びの問題を未然に防ぐことができるのです。
親御さんの認識と治療継続の背景
保護者調査では、72.6%が混合歯列期(6〜12歳)を矯正治療の最適時期と回答しています。
その理由としては、以下の点が挙げられています。
- この時期の子どもは治療内容を理解しやすい
- 親御さんからの指示に協力しやすい年代である
- 顎の成長がまだ活発で、矯正効果が得やすい
- 早期治療により、後々の負担を最小化できる
多くの親御さんが治療継続の必要性を理解しているからこそ、この高い認識率が生まれているのです。
第一期治療を中断した場合の具体的シナリオ
ケース1:叢歯(乱ぐい歯)のため第一期治療を受けたが、中断した場合
背景:8歳で叢歯を指摘され、拡大床による第一期治療を開始したAさんのお子さん。
1年間の治療で顎がやや拡大し、歯並びが改善の兆しを見せていました。
中断の判断:「ここまで改善したから、あとは永久歯が自然に生えてくればいいだろう」と、治療を中止してしまいました。
その後の結果:
- 12歳時点で永久歯が次々と生え始めると、再び高度な叢歯が戻ってきた
- このため第二期治療は、4本の抜歯が必要な複雑な矯正に
- 治療期間は3年半に延長され、総費用は当初予定の130万円に増加
- 第一期を継続していれば、抜歯なしで2年の治療で完了していたはず
このケースから分かるように、一見改善しても第一期治療の中断は、後々より大きな負担につながるのです。
ケース2:開咬(前歯が咬まない)で第一期治療を中断した場合
背景:6歳で開咬と診断された10歳のBさん。
舌の習癖改善と顎の成長誘導を目的とした第一期治療を6ヶ月受けました。
中断の判断:「目に見える大きな変化がないから」という理由で、親御さんが治療を中止してしまいました。
その後の結果:
- 第一期治療の不完全な状態のまま、永久歯列期に突入
- 開咬がさらに悪化し、咀嚼機能にも影響が出現
- 第二期治療では、マルチブラケット装置を4年間装着する必要に
- 顔貌の自然な成長曲線を逸脱してしまった可能性も
開咬のような問題は、第一期で段階的に改善することが最も効果的です。
中断により、より複雑で長期の治療が余儀なくされました。
ケース3:治療を継続した場合との比較
背景:同じく8歳で矯正治療を開始した2人のお子さんを比較します。
【Cさん:第一期治療を継続した場合】
- 第一期:1年半の治療で顎を適切に拡大し、永久歯の生えるスペースを確保
- 第二期:12歳から1年8ヶ月のワイヤー矯正で完成
- 総治療期間:約3年2ヶ月
- 総費用:85万円(第一期45万円+第二期40万円)
- 抜歯:なし
【Dさん:第一期治療を中断した場合】
- 第一期:1年の治療で中止
- 第二期:12歳から3年6ヶ月の複雑な矯正が必要
- 総治療期間:約4年6ヶ月
- 総費用:120万円(第一期30万円+第二期90万円)
- 抜歯:4本(健康な永久歯を抜歯)
このように、第一期治療を継続したCさんと中断したDさんでは、治療期間で1年4ヶ月、費用で35万円の大きな差が生まれました。
また、健康な歯を抜歯する必要がなかったのも、大きなメリットです。
第一期治療を検討する際の費用と補助制度
自治体による補助金を活用する
矯正治療の費用負担が大きいことは確かですが、自治体によっては補助金制度が設けられています。
例えば、東京都杉並区では矯正治療に対して最大5万円の補助が提供されています。
第一期治療を「高い」という理由だけで中断するのではなく、まずは以下の情報収集をお勧めします。
- お住まいの市区町村の補助制度の有無
- 医療費控除の活用(矯正治療は医療費控除の対象)
- 治療費の分割払いや無金利プランの提供
- 複数の矯正歯科での見積もり比較
これらの方法を組み合わせることで、経済的負担を大幅に軽減できる可能性があります。
長期的な経済メリット
第一期治療の費用は確かに高額ですが、継続することによる長期的なメリットを考えると、むしろ経済的に合理的な選択です。
- 第二期治療費の削減:複雑な治療が不要になれば30〜50万円の削減
- 治療期間短縮:通院回数が減ることで、時間的・経済的コストが低減
- 抜歯による損失の回避:健康な歯を残すことができる(将来的な価値は計り知れない)
- 後悔による再治療の防止:中年以降に再度矯正治療が必要になるリスク低下
「今は費用がかかるけど、後々大きな節約になる」という視点が重要です。
専門医への相談の重要性
個人差が大きい理由
お子さんの歯並びや顎の成長は、一人ひとり異なります。
第一期治療を継続すべきか、どの段階で中止できるかは、個人の診断に基づく専門医の判断が不可欠です。
以下のような要因が、治療計画に大きく影響します。
- 顎の成長予測(遺伝的な要因も含む)
- 現在の咬合の状態と改善度合
- 永久歯の萌出パターン
- 舌癖や口呼吸などの悪習慣
- 骨密度や成長速度
初診時の診断の重要性
矯正治療を検討している親御さんは、必ず複数の歯科医院で初診診断を受けることをお勧めします。
その際に確認すべきポイントは以下のとおりです。
- 第一期治療の必要性と期間の根拠
- 第二期治療へ進む際の判断基準
- 途中で治療方針を変更する可能性
- 合計費用と分割払いの方法
- 医師との定期的なカウンセリングの予定
信頼できる専門医を見つけることが、後悔のない矯正治療の第一歩です。
小児矯正の第一期治療は、中断せず継続することが最善の判断です
この記事を通じて、小児矯正の第一期治療について、以下の重要なポイントをお伝えしてきました。
- 第一期治療の役割:顎の成長誘導と永久歯の正しい生え変わりを促すための準備段階
- 中断のリスク:後々の第二期治療が複雑化し、抜歯や長期矯正が必要になる可能性の増加
- 経済的実態:第一期を継続した方が、長期的には治療費と治療期間を削減できる
- 親御さんの認識:72.6%の親が混合歯列期を最適な治療時期と認識している
- 統計的背景:5歳児の不正咬合率が約2倍に増加し、早期治療の重要性が高まっている
結論として、小児矯正の第一期治療は、原則として中断せず継続することが推奨されています。
費用や期間の懸念があれば、専門医とよく相談し、自治体の補助制度や支払いプランを活用して、治療を完遂することをお勧めします。
お子さんの将来のために、今できる最善の判断を
お子さんの歯並びについて悩みを抱えているなら、「第一期だけでやめられるか」という発想ではなく、「第一期治療を通じて、どのような健康な歯並びを作るか」という前向きな視点で検討していただきたいです。
矯正治療は、単なる美容的な問題ではなく、以下のような人生全体に関わる重要なものです。
- 咀嚼機能の改善による栄養吸収の向上
- 発音や語呂の改善
- 顎関節への負担軽減
- 将来的な虫歯や歯周病のリスク低下
- お子さん自身の自信と心理的な健全性の向上
今この瞬間の判断が、お子さんの健康と人生の質に大きく影響します。
信頼できる矯正歯科医に相談し、専門的なアドバイスを受けた上で、お子さんのために最善の治療計画を立てることを強くお勧めします。
第一期治療の継続は、お子さんへの最高のプレゼントになるはずです。