
歯医者が本当は「来て欲しくない患者」というのが存在すること、ご存知でしょうか?
これは何も患者さんの人格や性格を否定するものではなく、医院側が対応に苦労する特定のパターンの患者行動を指しています。
実は日本全体の3分の1以上の人が該当するというこの問題、あなたも知らないうちに該当しているかもしれません。
この記事では、歯科医院側が本当に困っている患者の特徴と、その理由、そして改善策についてお話しします。
自分の歯の健康を守りながら、医者との関係も円滑にするヒントが見つかるはずです。
歯医者が「来て欲しくない患者」とは、症状悪化後に駆け込む人たちです

歯科医院が敬遠する患者とは、治療が必要だと認識しながらも受診を避け続け、症状が悪化してから緊急で駆け込む患者のことです。
日本全体の約3分の1以上(33~35%)がこのパターンに該当することが調査で判明しており、これは歯科医療における大きな課題となっています。
実は、これは患者さんの責任だけでなく、医療側と社会全体の問題でもあるのです。
なぜ歯医者は「症状悪化型患者」を困るのか?その理由を詳しく解説します
理由1:医療の効率性が大きく低下する
症状が悪化してから来院する患者さんは、通常よりも治療期間が長く、治療費も高額になる傾向があります。
早期発見であれば簡単な治療で済むケースも、放置されることで複雑な治療が必要になってしまうのです。
- 初期段階の虫歯であれば詰め物で済む治療が、進行するとクラウン治療や根管治療が必要に
- 軽度の歯周病の予防ケアで十分な場合が、重度化すると抜歯の可能性まで生じる
- 一回の簡潔な治療で終わるはずが、複数回の来院が必要になる
医院側としては、限られた診療時間と設備を効率よく使う必要があります。
予防や初期治療で予定を立てていたのに、緊急対応で予約枠が埋まってしまうのは、経営上の大きな課題になるのです。
理由2:患者さんの満足度が低くなりやすい
症状が悪化してから来る患者さんは、既に強い痛みや違和感を抱えています。
このような状態での治療は、患者さん自身の負担が大きく、結果として医院への不信感につながりやすいのです。
- 痛みが強いため、治療中の不快感が増大する
- 複雑な治療になるため、治療期間が長くなり患者さんの負担増加
- 治療費が高額になることで、医院への不満が生じやすい
- 「もっと早く来ていれば簡単だったのに」という後悔が生じ、医院のイメージダウン
2020年の日本歯科医師会調査では、定期チェック中の患者さんの満足度は87.4%であるのに対し、全体的な治療満足度は77.9%に留まっています。
これは、予防的に来院する患者さんと、症状悪化後に来院する患者さんの満足度に大きな差があることを示唆しています。
理由3:医院側のスタッフにも精神的負担が生じる
症状が悪化している患者さんは、当然ながら不安や焦りを感じています。
その感情が医院スタッフに向けられることも多く、スタッフのストレスが増加する原因となります。
- 緊急対応で診療予定が乱れ、他の患者さんへの対応に支障が出る
- 症状が悪化した患者さんからの厳しい指摘や要望が増える
- 限られた時間で複雑な治療をこなす必要があり、スタッフの心身の負担が増加
理由4:患者数が減少する一方で競争が激化している
日本全国には約68,000軒の歯科医院があります。
しかし、1年に1回以上の健診を受ける人はわずか4割強に過ぎず、全く受診しない人が4割弱存在するのです。
加えて、2040年以降は高齢化による受療率の減少が予測されており、各医院は経営の危機感を強めています。
このような状況下では、効率的に対応でき、定期的に来院してくれる患者さんを優先したいという医院側の思いが強まるのは自然なことです。
症状悪化型患者が増えている背景には何があるのか?
来院しない主な理由1:時間がない
特に若い世代で最も多い理由が「時間不足」です。
仕事や育児に追われ、歯科医院に行く時間を確保できないという悪循環が生まれています。
- 仕事が忙しく、平日に歯科医院に行く時間がない
- 土日も子どもの世話や家事で手一杯
- 歯科医院は予約制で、都合のいい時間に予約が取れない
- 痛くないうちは、わざわざ時間を作る気になれない
来院しない主な理由2:費用と不安
全年代で一定の割合で見られるのが「費用負担への懸念」と「歯医者への恐怖心」です。
これらは合理的な判断というよりも、心理的なハードルになっているケースが多くあります。
- 歯科治療は保険診療でも費用がかかることへの不安
- 治療になるとさらに費用がかかるのではないかという懸念
- 歯医者に行くと何か悪いことが見つかるのではないかという不安
- 治療中の痛みや不快感への恐怖心
来院しない主な理由3:健診内容の理解不足
非常に深刻な問題として、受診しない人の8割以上が歯科健診の内容を知らないという調査結果があります。
つまり、多くの人が「歯科健診とは何か」「なぜ定期的に受ける必要があるのか」を理解していないのです。
歯の健康の重要性が社会全体で啓発されているのに、具体的な健診内容まで浸透していないという大きなギャップが存在しています。
来て欲しくない患者の具体的な特徴と事例
事例1:虫歯を自覚しながら3年間放置して突然来院
患者さんの状況
30代の会社員男性。
奥歯に違和感を感じながらも、「仕事が忙しい」「今は痛くない」という理由で放置していました。
3年後、ついに激痛で眠れなくなり、「今すぐ治してほしい」と緊急来院。
歯医者側の困惑
- 虫歯が大きく進行しており、単なる詰め物では対応できない状態
- 神経まで達している可能性があり、根管治療が必要
- 緊急対応のため、既に予約していた他の患者さんの予定を変更する必要が生じた
- 患者さんは痛みで不機嫌であり、治療期間の長さに不満を述べる
本来であれば
初期段階での来院であれば、簡単な詰め物で1回の治療で終わりました。
費用も現在の数分の一で済み、患者さんの負担も医院の負担も大きく異なっていたはずです。
事例2:歯周病を放置して、要介護状態で訪問診療を要求
患者さんの状況
70代の男性。
歯周病の症状があったにもかかわらず、「歯が揺らいでいるけど生活に支障がない」と放置。
結果として歯が次々と抜け落ち、さらに全身疾患を併発してしまいました。
現在は要介護状態で、訪問歯科診療の要求があります。
医院側の対応課題
- 訪問診療は通常の診療より手間と時間がかかる
- 既に多くの歯が喪失していており、インプラントなどの高額治療が必要になる可能性
- 医院の経営リソースがかなり圧迫される
- 患者さんの家族からの要望が多く、対応の難易度が高い
統計的な課題
実は、要介護高齢者の約9割に歯科医療が必要なのに対し、実際の受診率はわずか27%程度です。
この課題に対応する訪問歯科診療の実績も少なく、ニーズに追いついていないのが現状です。
事例3:子どもの初診が遅れ、複数の虫歯が一度に見つかる
患者さんの状況
5歳の子どもを持つ親。
「子どもの歯は生え変わるから大丈夫」という誤解から、初めての歯科検診が5歳になってからでした。
実際に検査してみると、既に複数の虫歯が存在していました。
歯医者側の対応の大変さ
- 子どもの治療は大人以上に時間と配慮が必要
- 複数の虫歯があると治療期間が長くなり、子どもの通院頻度が増加
- 親の「生え変わるから大丈夫」という誤解を修正する必要があり、教育コストが増加
- 子どもが歯医者を恐れるようになる可能性が高まり、将来の健診率低下につながる
予防の重要性
若い世代ほど虫歯が減少している傾向が見られるのは、定期的な検診と予防を習慣化している家庭が増えているからです。
逆に言えば、予防意識の低い家庭では問題がより深刻化する傾向があります。
あなたが「来て欲しくない患者」に該当していないかチェックしましょう
以下の項目に当てはまる場合、あなたは知らないうちに「来て欲しくない患者」のカテゴリーに入っている可能性があります。
- 1年以上、歯科医院に受診していない
- 虫歯や歯の違和感を自覚しているが、放置している
- 歯医者に行くなら、症状が痛くなってからと考えている
- 歯科検診の内容や重要性について、詳しく知らない
- 「歯が揺らいでも生活できるから大丈夫」と考えている
- 子どもの歯について、定期的なチェックを受けさせていない
- 予防的な通院ではなく、症状が出た時だけ通院している
もし複数当てはまった場合は、医院側が対応に困りやすいパターンになっている可能性があります。
まとめ:「来て欲しくない患者」から「歓迎される患者」へ
歯医者が「来て欲しくない患者」とは、症状悪化後に駆け込む、治療が必要だと認識しながらも受診を避ける患者です。
日本全体の3分の1以上がこのパターンに当てはまることは、単なる個人の問題ではなく、社会全体の課題でもあります。
医院側が困る理由は:
- 医療の効率性が低下し、複雑な治療になる
- 患者さんの満足度が低くなりやすい
- スタッフの負担が増加する
- 経営上の課題が生じる
しかし、これは決して患者さんの性格や人柄の問題ではなく、時間不足、経済的不安、知識不足という構造的な問題が背景にあります。
歯の健康は全身の健康に大きく影響することが、医学的にもしっかり証明されています。
予防的な通院習慣を身につけることで、あなたも「医者に歓迎される患者」になることができるのです。
今からできること:背中を押すメッセージ
もし你がこの記事を読んで「自分に当てはまるかもしれない」と感じたなら、それは素晴らしい気づきの瞬間です。
完璧を目指す必要はありません。小さな一歩から始めましょう。
明日からできること
- とにかく一度、歯科医院に連絡してみる
「1年以上行っていないので、一度診てもらいたい」という電話をしてみてください。医院側はそういった連絡を待っているのです。 - 症状がなくても「健診」という名目で受診する
痛みがなければ「定期検診」として訪れてください。医院側は断られることはありません。 - 子どもがいれば、子どもの検診を優先する
予防意識を子どもの世代から始めることで、家族全体の健康が変わります。 - 「定期検診のご案内」が来たら、それを機会と考える
医院からのご案内は、あなたを歓迎しているサイン。そのタイミングで受診しましょう。
1年に数回、予防的に歯科医院を訪れるという習慣は、あなたの歯を守るだけでなく、医院側にも喜ばれ、結果的にあなた自身の医療体験も向上します。
これは win-win の関係です。
歯の健康は全身の健康につながります。
そして、予防的な通院習慣は、老後の生活の質を大きく左右するものです。
今からでも遅くありません。
あなたの歯を守り、「歓迎される患者」になるための第一歩を踏み出してみてください。