
うちの猫、今までずっと歯磨きをしてこなかったけど大丈夫だろうか?
野良猫だって歯磨きなんてしていないのに、なぜそんなに心配する必要があるんだろう?
そんなふうに思ったことはありませんか?
実は、猫に歯磨きをしていないことは、口の中だけにとどまらず全身の健康に大きなリスクをもたらす可能性があります。
この記事では、歯磨きをしていない猫に何が起こるのか、そしてこれからどうすればよいのかについて、獣医学的な根拠に基づいて詳しく解説します。
すでに成猫になってしまった猫でも、今から対策することで予防・改善できることがたくさんありますよ。
猫の歯磨きをしてないと、歯周病と全身疾患のリスクが高まります

結論からお伝えします。
猫に歯磨きをしていない場合、歯周病や口内炎が発症しやすくなり、さらには慢性腎臓病などの全身疾患へ進行するリスクが高まる可能性が高いです。
猫が3歳を超えると、多くの個体が何らかの歯周病を抱えているとも指摘されています。
つまり、今まで歯磨きをしてこなかったのであれば、知らない間に愛猫の口の中が病気に侵されている可能性があるということなのです。
なぜ猫に歯磨きをしないと問題が起こるのか
歯磨きをしない猫に最も多く起こる「歯周病」とは
猫の口の病気で最も多いのは、歯周病です。
歯周病の原因は歯垢(プラーク)に含まれる細菌で、この細菌が増殖すると歯肉が炎症を起こします。
歯周病の進行段階は以下のようなステップをたどります。
- 歯垢の蓄積(初期段階)
- 歯肉炎への進行(歯ぐきが赤くなる、腫れるなど)
- 歯周炎への進行(歯を支える骨が溶ける)
- 歯のグラつき、最終的には抜歯が必要な状態
そしてこの進行は、思いのほか早いのです。
歯垢が歯石になるまでの驚くべき速さ
猫の場合、歯垢は3~5日で歯石に変わるとされています。
一度歯石になってしまうと、家庭での歯ブラシでは除去できず、動物病院での専門的なスケーリング(歯石除去)が必要になります。
つまり、歯磨きをしていない猫は、毎日のように新しい歯垢が蓄積され、あっという間に歯石になっていくという悪循環に陥っているのです。
歯周病が進むと起こる症状
歯磨きをしていない猫が歯周病を発症すると、以下のような症状が見られるようになります。
- 強い口臭 - 最初に飼い主さんが気づく症状であることが多いです
- よだれが増える、または膿のような分泌物が出る
- 食事中に痛がって途中でやめる、食べづらそうにする
- 歯ぐきからの出血
- 歯ぐきが腫れたり、顔が腫れる場合もあります
- 根尖膿瘍(歯の根の先端に膿がたまる)による鼻水やくしゃみ
これらの症状は、単なる口の問題ではなく、猫が痛みと不快感を感じている信号なのです。
歯周病が全身疾患を引き起こすメカニズム
ここからが非常に重要です。
歯周病は口腔内にとどまりません。
歯周病菌や炎症物質が血管を通じて全身に流れることで、心臓・肝臓・腎臓などの重要な臓器に悪影響を及ぼす可能性があります。
特に注目されているのが、慢性腎臓病との関連性です。
猫は高齢になるにつれて腎臓病になる確率が高い動物ですが、歯周病がある猫はない猫と比べて、およそ3年早く腎臓病を発症する傾向があるという臨床的な報告もあります。
つまり、今から歯磨きなどの口腔ケアを始めることで、最終的には愛猫の寿命を伸ばすことに直結する可能性があるのです。
飼い猫が野生猫と異なる理由
ここで一つの疑問が浮かぶかもしれません。
「野良猫だって歯磨きなんてしていないのに、なぜ平気なんだろう?」
この質問には、実は明確な答えがあります。
野生のネコ科動物は、狩りをして肉や骨を噛みちぎることで、自然に歯の自浄作用が働きやすい環境にいます。
硬い獲物を噛む行為が、物理的に歯垢を除去する効果を持っているのです。
一方、飼い猫はどうでしょうか。
多くの飼い猫は、やわらかいウェットフードやカリカリを食べるという、歯を「フル活用」しない生活を送っています。
その結果、歯が本来持つ自浄能力を十分に発揮できず、歯垢がどんどん蓄積していきやすい環境に置かれているのです。
つまり、飼い猫には野生猫の代わりに、人間が意識的な口腔ケアを提供する責任があるということなのです。
歯磨きをしていない猫の実情と統計
日本の猫飼い主における歯磨き実施率
日本の猫飼い主の間では、どのくらいの割合が実際に歯磨きを実施しているのでしょうか。
各種調査やペット保険会社の統計によると、猫に歯磨きをしている飼い主は少数派であり、「ほとんどしていない」「全くしていない」という飼い主が大多数を占めているとされています。
これは、犬に比べて猫は歯磨きが難しいことや、猫の歯磨きについての認識がまだ十分に広まっていないことが背景にあります。
動物病院が見ている現実
しかし、実際の動物病院の現場では、大きなギャップが生まれています。
獣医師たちは、以下のような報告をしています。
- 3歳以上の成猫の大多数が何らかの歯周病を抱えている
- 口臭や歯石、歯肉炎を持つ猫は非常に多い
- 若いうちから口腔ケアを心がけている飼い主の猫は、健康的な歯を保っている傾向が明らかに異なる
つまり、多くの猫が歯磨きをされていないがために、不必要な苦痛と健康リスクにさらされている状況が現実なのです。
具体例:歯磨きをしていない猫に起こりうるシナリオ
例1:3歳の猫に歯石が発見された場合
3歳の飼い猫が口臭を指摘されて動物病院に連れていったところ、すでに歯石が沈着しており、軽度の歯肉炎が診断されたケースを考えてみましょう。
この時点では、まだ抜歯は不要ですが、動物病院でのスケーリング処置が必要になります。
そしてここから先、飼い主さんが何もしなければ、数年以内に重度の歯周病へと進行する可能性が高いのです。
一方、この時点から毎日の歯磨きを開始した場合は、歯周病の進行を大幅に遅延・抑止できる可能性があります。
つまり、今この瞬間の判断が、その後の人生を大きく左右する可能性があるということです。
例2:7歳で抜歯が必要になったケース
7歳の猫が「最近食事がしづらそう」という理由で動物病院に連れていかれた結果、重度の歯周病により複数の歯の抜歯が必要と診断されたケースがあります。
若い頃から歯磨きをしていれば、防げたかもしれない状況です。
抜歯後の猫は、歯がない状態でも食事することは可能ですが、以下のようなリスクが生じます。
- 食事の効率が低下し、栄養吸収が悪くなる可能性
- 全身麻酔下での抜歯処置に伴うリスク(特に高齢猫)
- その後の腎臓病などの全身疾患発症リスクが既に高まっている可能性
例3:若いうちから歯磨きを始めた猫との対比
一方、1歳の頃から週3~4回の歯磨きを習慣にしている猫は、どうなるでしょうか。
10歳になっても歯がほぼ完全に残っており、歯周病の症状がほとんど見られていないという事例も報告されています。
この差は、実に劇的です。
同じ年月が経過しても、口腔ケアの有無で健康寿命に大きな差が生まれるのです。
歯磨きをしていない猫の対処法
まずは動物病院での検診から始める
「今までずっと歯磨きをしてこなかった」という場合でも、決して遅くはありません。
すべき最初のステップは、一度動物病院で猫の口腔内の状態をチェックしてもらうことです。
獣医師の診察を受けることで、以下の情報が得られます。
- 現在の歯周病の進行段階
- 抜歯が必要な歯があるかどうか
- すぐに処置が必要かどうか、または経過観察で良いか
- 今後の口腔ケアの適切な方法
重度の歯周病がある場合は専門的処置が必須
すでに重度の歯周病が診断された場合、家庭での歯磨きだけで改善することはできません。
動物病院でのスケーリング(歯石除去)や、場合によっては抜歯が必要になる可能性があります。
これらの処置は全身麻酔を伴うため、特に高齢猫の場合は事前に血液検査などで全身状態を確認する必要があります。
歯ブラシに慣れさせるための工夫
多くの猫は、歯ブラシに最初は嫌がります。
しかし、工夫次第で慣れさせることは可能です。
- 歯磨きペースト - 猫用の歯磨き粉には、肉や魚の風味が付いているものが多く、猫が興味を持ちやすいです
- 徐々に慣れさせる - 最初は指で軽く口周りを触るところから始め、数週間かけて歯ブラシに慣れさせます
- 短時間で完結させる - 無理に長く続けず、1~2分程度にとどめます
- ポジティブな経験にする - 歯磨き後にご褒美を与えるなど、良い経験として定着させます
歯ブラシが難しい場合の代替手段
もし歯ブラシがどうしても受け入れられない場合は、以下の方法も活用できます。
- デンタルガム・デンタルフード - 機械的に歯を磨く効果を期待できます
- 歯磨きシートやガーゼ - 歯ブラシより受け入れやすい場合があります
- 口腔ケアサプリメント - 水に混ぜたりフードに混ぜたりできるものもあります
ただし、最も効果が高いのはあくまで歯ブラシによる機械的な歯垢除去であることを念頭に置いておいてください。
代替手段はあくまで補助的なものと考えるべきです。
理想的な歯磨きの頻度
歯磨きをこれから始める場合、どのくらいの頻度が必要でしょうか。
- 理想:毎日1回
- 現実的な目標:週2~3回
- 最低限:3日に1回
この頻度設定の理由は、前述の「歯垢が3~5日で歯石化する」という事実に基づいています。
毎日は難しくても、少なくとも週2~3回は実施することで、歯石化を防ぐ効果が期待できます。
猫の歯磨きをしてないことの影響についてのまとめ
この記事でお伝えした内容をまとめます。
猫に歯磨きをしていないことは、決して軽視できない問題です。
短期的には歯周病や口臭といった口腔内のトラブルを引き起こし、長期的には腎臓病などの全身疾患へと波及する可能性があります。
特に重要なのは、以下の3点です。
- 猫の歯垢は3~5日で歯石に変わり、一度歯石になると自宅では除去できない
- 歯周病は進行が早く、気づかないうちに重症化している可能性がある
- 歯周病菌が全身に影響し、寿命にまで関係する可能性がある
飼い猫は野生猫と異なり、人間の適切なケアがあってこそ健康を保つことができます。
今からでも決して遅くはありません。
まずは動物病院で現在の状態を把握し、その上で愛猫にとって最適な口腔ケアプランを立てることをお勧めします。
今からできることから始めましょう
もしあなたの猫が、これまで歯磨きをされていなかったとしても、これからの行動で大きく変えることができます。
次のステップを今週中に実行してみてください。
- Step 1:動物病院で予約を取り、猫の口腔内をチェックしてもらう
- Step 2:獣医師のアドバイスに基づいて、必要な処置を受ける
- Step 3:自宅での歯磨きを少しずつ習慣化させていく
一日のうちわずか数分の歯磨きが、あなたの愛猫の人生を大きく変える可能性があります。
愛猫との時間をより長く、より健康的に過ごすために、今からでも遅くはありません。
あなたの猫のために、今日からできる一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。