脅迫罪で警察が動かないのはなぜ?【知恵袋】

脅迫罪で警察が動かないのはなぜ?【知恵袋】

脅迫罪の被害に遭ったのに、警察が対応してくれないと感じていませんか?
実は、被害者が「警察が動いていない」と感じるケースは一定数存在しますが、これは警察が全く動かないわけではなく、特定の理由があるためです。
本記事では、脅迫罪の実態、警察の対応が遅れる理由、そして警察を動かすための具体的な方法を統計データを交えながら解説します。
正しい知識と対応方法を知ることで、あなたの被害をしっかりと解決へ導くことができるようになります。

脅迫罪で警察が対応しない理由は「要件判定の厳しさ」にあります

脅迫罪で警察が対応しない理由は「要件判定の厳しさ」にあります

脅迫罪の被害届を出しても、警察が本格的な捜査に乗り出さないケースが多い理由は、単に警察が怠けているわけではありません。
むしろ、脅迫罪として成立する要件が厳密に判定されているためです。
被害者が「これは脅迫だ」と感じていても、法律的な要件を満たさなければ、警察は事件化することができないのです。

日本の法律では、脅迫罪は刑法222条で定められており、「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者」は、2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処せられます。

しかし、単に「怖い」と感じたり、相手に怒鳴られたりしただけでは脅迫罪にはなりません。
法律的には、「同じ状況の一般人なら怖いと感じる程度」の害悪告知が必要とされているのです。

脅迫罪の実際の逮捕率と警察の対応状況

では、実際に脅迫罪の被疑者がどの程度逮捕されているのでしょうか。

2024年の検察統計によると、脅迫罪で被疑者として取り調べを受けた人のうち、実際に逮捕された人の割合は約56%です。
これは決して低い数字ではなく、半数強が逮捕されており、脅迫罪が「警察に全く対応してもらえない犯罪」というわけではないことを示しています。

さらに注目すべき点として、起訴後の有罪率は約99.9%という統計があります。
つまり、警察が事件化し、検察が起訴した案件の99.9%が有罪判決を受けているということです。
これは警察や検察が、事件化する際に相当厳密な判定をしていることを意味しています。

一方で、警察庁の「刑法犯統計」からは、脅迫罪が原則として放置されているという証拠は見当たりません。
むしろ、脅迫犯は相応に逮捕・起訴されているのが実態です。

なぜ警察は脅迫罪で「動かない」と感じさせるのか

警察が脅迫罪として認定しない4つの理由

警察が対応に積極的でないように見える理由は、いくつかの構造的な背景があります。

1.脅迫の要件を満たしていないケース

最も多いのは、被害者が「脅迫だ」と感じていても、法律的な要件を満たしていないというケースです。

  • 単なる悪口や暴言であり、生命・身体・財産などへの具体的な害悪の告知がない
  • 感情的な罵倒であり、「一般人なら怖いと感じる」という基準に達していない
  • 相手の怒りの表現であり、実行の可能性がない

例えば、「お前のことが気に入らない」「二度と顔を見たくない」といった発言は、相手を傷つけますが、脅迫とはなりません。
これらは民事トラブルに近いと判断され、警察は刑事事件としての扱いを躊躇うのです。

2.証拠不足と加害者特定の困難さ

デジタル社会では、匿名での脅迫が増えています。

  • 捨てアカウントやVPN経由のメール
  • SNS上の匿名メッセージ
  • ブログやインターネット掲示板への書き込み
  • 情報源の特定が困難な場合

これらのケースでは、加害者が誰であるか特定できない限り、警察は本格的な捜査に乗り出せません
警察は被害者に「まず証拠をそろえてほしい」と説明することになり、これが被害者には「警察が動かない」と映ってしまうのです。

3.緊急性と重大性の判断

警察は限られたリソースの中で、より危機的な状況を優先します。

  • 今まさに危害が加えられそうな切迫状況か
  • 単なる過去の一度の発言にとどまるか
  • ストーカー行為やDVと一体になっているか

警察が「危険度は高くない」と判断した場合、警告で終わり、本格捜査に至らないことがあります。
被害者の実感としては「何もしてくれていない」と感じますが、警察の判断としては「リスク評価に基づいた対応」なのです。

4.被害者側の説明が不十分なケース

警察の窓口対応は多忙であり、被害届の内容によって対応が変わります。

  • 事実経過が整理されていない
  • いつ、どこで、誰が、どのような言葉で脅したかが不明確
  • 感情的な訴えが中心で、客観的事実が少ない
  • 過去の経緯が複雑で、脅迫の部分が埋もれている

忙しい交番の窓口では、要件を満たすかどうかの見極めが難しく、その場で「事件化は難しいかもしれません」と案内されることもあります。
そのため、同じ脅迫でも、説明方法によって対応が変わることがあります

警察を動かすために必要な具体的対策

証拠をしっかり確保する

脅迫罪で警察が動く際に最も重要なのが、証拠の存在です。

  • メッセージの確保:LINE、メール、SNS DM、SMSなどの脅迫メッセージは、スクリーンショットと原本の両方で保存する
  • 音声記録:電話や対面での脅しを受けた場合は、可能な限り録音する
  • 行動記録:日時、場所、相手、発言内容を「被害メモ」として記録しておく
  • 物的証拠:脅迫文が書かれた手紙や荷物などは、触らずに保管する

これらの証拠があれば、警察も事件の可能性を客観的に判定しやすくなります。

警察の適切な部署に相談する

警察に相談する際は、どこに行くかが重要です。

  • 交番・駐在所よりも、警察署本部:生活安全課や刑事課などがある大きな警察署に行く
  • 明確な意思表示:「相談がしたい」ではなく「被害届を出したい」と明言する
  • 記録を持参:上記の証拠やメモを全て持参し、客観的な説明ができる状態にする

交番では対応が限定的になることが多いため、より権限がある部署での相談が効果的です。

継続的な対応と記録

一度の相談で対応されない場合、継続的なアプローチが必要です。

  • 複数の脅迫が続く場合は、その都度警察に報告する
  • 被害が増えたことを伝える
  • 「この件について、どのような対応をしていただけるか」と明確に質問する

警察にとって、「継続的な危険がある」と判断されれば、対応の優先度が上がります。

脅迫罪で警察が動かない場合の代替手段

警察が事件化に消極的な場合でも、被害者には他の選択肢があります。

法的な代替手段の活用

  • 弁護士への相談:民事上の対応や損害賠償請求の検討
  • 内容証明郵便:加害者への明確な警告と証拠保全
  • 民事保全:緊急的な被害の防止を裁判所に申し立てる
  • 損害賠償請求:刑事事件化を待たずに民事裁判で解決を求める

特別な法律の活用

脅迫がストーカー行為やDVと関連している場合は、専門的な法律が適用されます。

  • ストーカー規制法:繰り返される脅迫や監視行為に対応
  • 配偶者暴力防止法:夫婦間での脅迫に対する保護命令
  • 迷惑行為防止条例:自治体によって細かく規定されている

これらは脅迫罪よりも警察が対応しやすい法律なので、状況に応じて活用することが効果的です。

具体例:警察が対応するケースと対応しないケース

ケース1:警察が迅速に対応した脅迫

事案の内容
Aさんは元交際相手から「お前の勤務先に爆弾を仕掛ける」というメールを受け取りました。
メッセージには具体的な建物の名前が記載されていました。

警察の対応
Aさんがこのメールのスクリーンショットを持参して警察署を訪れると、生活安全課は即座に対応を開始しました。
元交際相手は爆弾予告罪(刑法235条)と脅迫罪の両方で逮捕されました。

対応が早かった理由
・具体的な対象(勤務先)が明記されていた
・実害が発生する可能性が高い緊急性があった
・文書による客観的な証拠が存在した
・公共の安全に関わる案件だった

ケース2:警察が対応に慎重だった脅迫

事案の内容
Bさんは職場の同僚から「二度と俺の前に現れるな、さもないとどうなるかわからないぞ」と言われました。
Bさんは恐怖を感じて警察に相談しました。

警察の対応
警察は「本人が具体的な危害を加えるつもりがあるのか判断しがたい」として、当面は警告にとどめ、本格的な捜査には進みませんでした。

対応が慎重だった理由
・「どうなるかわからない」は曖昧で、具体的な害悪の内容がない
・同僚という関係で、単なる感情的な発言と見なされた
・証拠がBさんの証言のみで、客観的記録がない
・過去に同僚間のトラブルが多く、この発言だけでは重大性が不明確だった

ケース3:警察が対応した継続的な脅迫

事案の内容
Cさんは匿名アカウントから、SNS上で「お前の親に危害を加える」というメッセージを複数回受け取りました。
最初は警察に相談しましたが、加害者特定ができず、対応は鈍かった。
しかし、その後も脅迫が続き、Cさんが「現在も脅迫が継続している」と何度も警察に報告しました。

警察の対応
警察は発信者情報開示請求を申し立て、加害者を特定し、最終的に逮捕に至りました。

対応が進展した理由
・継続性により、重大性が認識された
・被害者が何度も報告することで、警察の優先度が上がった
・複数のメッセージにより、客観的な脅迫の事実が明確になった
・法的な発信者情報開示請求の手段が活用された

脅迫罪で警察を動かすための最重要ポイント

証拠の重要性

何より重要なのは、脅迫があったことの客観的な証拠です。
メッセージ、音声記録、証言者の存在など、具体的な証拠があれば、警察も動きやすくなります。

明確な説明

警察に説明する際は、いつ、どこで、誰が、どのような言葉で、何を脅したかを明確に説明することが不可欠です。

継続的なアプローチ

一度の相談で対応されなくても、諦めずに何度も警察に報告し続けることで、優先度が変わることがあります。

複数の手段の検討

警察が対応しない場合は、弁護士や民事手続など、他の法的手段を並行して検討することが重要です。

脅迫罪で警察が動くための実行ステップ

ステップ1:証拠集めと整理

まず、以下の証拠を可能な限り揃えてください。

  • 脅迫メッセージのスクリーンショット
  • メール、SNSのスクリーン保存
  • 通話履歴の記録
  • 脅迫があった日時、場所、相手、内容の詳細なメモ
  • 証人の連絡先(可能であれば)

ステップ2:警察への相談準備

警察に行く前に、説明内容を整理します。

  • 年月日ごとに、脅迫の内容を時系列で列挙
  • 「一般人なら怖いと感じる程度」であることを、明確に説明できる準備
  • 生命・身体・自由・名誉・財産への害悪告知であることを、明確に説明

ステップ3:警察署での被害届提出

交番ではなく、生活安全課や刑事課がある警察署本部に行きます。

  • 「被害届を提出したい」と明確に伝える
  • 準備した証拠とメモを全て提出
  • 警察の対応予定を確認し、記録を求める

ステップ4:継続的なフォローアップ

脅迫が続く場合や、警察の対応に疑問がある場合は、継続的に報告と質問をします。

  • 新しい脅迫があれば、毎回警察に報告
  • 「現在どのような段階にあるのか」と定期的に確認
  • 納得がいかなければ、上級部署への相談を検討

脅迫罪の警察対応についての最終まとめ

脅迫罪で警察が「動かない」と感じるのは、決して警察が怠けているのではなく、法律的な要件判定が厳密だからです。
実際には、脅迫罪で逮捕される人は約56%に上り、起訴後の有罪率は99.9%です。

警察が対応に消極的になる理由は、以下の4点に集約されます:

  • 脅迫の法的要件を満たしていない:具体的な害悪告知がない、軽微な発言と判定される
  • 証拠不足と加害者特定の困難:匿名での脅迫や証拠がない場合
  • 緊急性と重大性の判断:警察が「危険度は低い」と判断した場合
  • 被害者側の説明不足:事実経過が明確でない、要件への当てはめが不十分

警察を動かすためには、証拠をしっかり確保し、明確に説明し、継続的にアプローチすることが最も重要です。

警察が対応しない場合でも、弁護士相談、民事保全、ストーカー規制法など、他の法的手段が存在します。
あなたは一人ではありません。専門家の力を借りながら、適切な対応をすることで、被害を解決することができるのです。

あなたの被害を解決するために

脅迫罪の被害に遭うのは、本当に辛く、恐ろしい経験です。
警察が対応してくれないと感じると、さらに不安感が増すでしょう。

しかし、本記事で説明したように、警察が対応しない理由には明確な背景があり、適切な証拠と説明があれば、警察は動きます

まずは、以下のアクションを起こしてみてください:

  • 脅迫メッセージのスクリーンショットを今すぐ保存する
  • 脅迫があった日時と内容を、詳しくメモに記録する
  • 警察署の生活安全課の所在地と連絡先を確認する
  • できれば弁護士に無料相談してから、警察に行く

あなたの被害は正当です。
正しい知識と対応で、必ず解決の道は開けます。
今こそ、行動を起こすときです。

キーワード: 脅迫罪 警察 動かない