
妊娠中期に突然お腹の上の方がチクチク痛くなったり、みぞおち周辺に違和感を感じたことはありませんか?
このような痛みは多くの妊婦さんが経験する現象で、実は赤ちゃんの成長に伴う自然な体の変化がほとんどです。
子宮の拡大、ホルモン変化、便秘など、主な原因は医学的に解明されており、適切な対処法で大半のケースは緩和できます。
この記事では、妊娠中期のお腹の上の方の痛みについて、医学的根拠に基づいた原因の詳細、生活習慣の改善方法、そして「いつ病院を受診すべきか」の判断基準まで、あなたの不安を払拭するための情報をお届けします。
妊娠中期のお腹上部の痛みは多くが自然な生理現象です

妊娠中期(16週〜27週)にお腹の上の方、特にみぞおち周辺が痛むというお悩みは、実は珍しくない症状です。
統計として、妊娠中の腹痛は約30~50%の妊婦さんが経験し、その多くが中期にピークを迎えます。
重篤な病気の兆候である可能性は1%未満と極めて低く、大部分のケースは赤ちゃんの成長に伴う自然な体の変化が原因です。
ただし「ほとんど心配いらない」ということと「完全に安心」は異なります。
以下の対処法と受診の目安を知ることで、安心して妊娠生活を過ごすことができます。
妊娠中期にお腹の上の方が痛くなる主な5つの原因
1. 子宮の拡大による胃への圧迫
妊娠中期に入ると、子宮は急速に成長を始めます。
この時期、子宮は下からだけでなく、上方向にも拡大し、その結果、その直上にある胃を圧迫するようになります。
特に食後に胃が膨らむことで、圧迫感が強まり、みぞおちの痛みや違和感として感じられるのです。
胃酸逆流も同時に発生
この胃の圧迫に伴い、胃酸が食道に逆流しやすくなり、「胸やけ」や「げっぷ」といった症状が一緒に起こることもあります。
これらは医学的には「妊娠性胃酸逆流症」と呼ばれる一般的な妊娠合併症です。
2. プロゲステロンによる消化器官の運動低下
妊娠中は、赤ちゃんを守るためにプロゲステロンというホルモンが大量に分泌されます。
このホルモンには「妊娠を継続させる」という重要な役割がある一方で、副作用として胃腸の蠕動運動(食べ物を移動させる動き)を鈍くしてしまいます。
その結果、便秘やガスが溜まりやすくなり、上腹部の圧迫感や痛みにつながるのです。
食べ物の消化が遅れるメカニズム
特に脂っこい食事や刺激物を摂取すると、消化がさらに遅延し、胃もたれや膨満感が悪化します。
これは妊娠によって避けられない生理的な変化であり、「食べたらいけない」わけではなく、「食べ方を工夫する」ことで対処できます。
3. 便秘とガスの蓄積
上記の胃腸運動の低下は、特に大腸への影響が大きく、妊娠中の便秘につながります。
妊娠中の便秘率は非妊娠時の2~3倍高く、その便やガスが腸に蓄積することで、上腹部全体に圧迫感や鈍い痛みを生じさせます。
このタイプの痛みは通常、排便やガスの排出で軽減する傾向があります。
4. 胎動と子宮靱帯の伸張
妊娠中期の後半(22週以降)に入ると、赤ちゃんの動きがより活発になります。
その胎動が上腹部まで波及したり、赤ちゃんの成長に伴って子宮を支える靱帯が引き伸ばされたりすることで、チクチクとした痛みやギューッとした違和感が生じます。
この痛みは通常は数秒~数十秒で消える一過性のものです。
5. 体重増加と姿勢の変化
妊娠中期から後期にかけて、平均的には7~10kg程度の体重増加があります。
この体重増加により、重心がお腹側に移動し、姿勢が反り気味になる人が多いです。
その結果、上腹部の筋肉が常に緊張状態となり、筋肉痛のような痛みが生じることがあります。
また、無理な動作やヨガなどの運動によって、上腹部の筋肉が過剰に伸張される場合もあります。
妊娠中期のお腹上部の痛みへの具体的な対処法
食生活の改善で消化負担を軽減する
少量頻回食が効果的
3食を基本としつつも、各食事の量を減らし、その代わり間食で栄養を補うという方法が有効です。
一度の食事量が少なければ、胃への圧迫が軽減され、消化負担も減少します。
例えば、朝食・昼食・夕食に加えて、午前と午後に軽いスナックを摂るというペースが理想的です。
消化を助ける食材の選択
- 食物繊維が豊富な野菜(ブロッコリー、ニンジン、ほうれん草)
- 全粒穀物(玄米、全粒粉パン)
- プルーンやキウイなどの便秘改善果実
- ヨーグルトなどのプロバイオティクス
これらは腸の動きを活発化させ、便秘やガス溜まりを予防します。
避けるべき食材
- 脂っこい揚げ物(フライドチキン、天ぷら)
- カフェインを含む飲料(コーヒー、濃い紅茶)
- 刺激物(辛いカレー、唐辛子)
- 炭酸飲料
これらは胃酸分泌を促進し、消化を遅延させる可能性があります。
水分補給と排便習慣の改善
便秘を予防するには、十分な水分摂取が不可欠です。
1日2~3リットルの水を、朝と夜間を避けながら、昼間に分散して摂取するのが理想的です。
妊娠中の過度な水分摂取は浮腫みにつながるため、一日の総量を意識しましょう。
加えて、毎朝コップ1杯の常温の水を飲むことで、腸の動きを促進させるという古典的で効果的な方法もあります。
姿勢とストレッチで筋肉の緊張をほぐす
正しい座り姿勢
椅子に座る際は、背もたれに背中全体をつけ、胸を張ることが大切です。
猫背や前かがみの姿勢は、上腹部をさらに圧迫し、痛みを増悪させます。
クッションなどを腰に入れて、自然な背骨のカーブを保つことをお勧めします。
安全で効果的なストレッチ
妊娠中に無理なストレッチは禁物ですが、以下の簡単な運動は上腹部の緊張をほぐすのに役立ちます。
- ゆっくりした深呼吸:鼻からゆっくり4秒かけて吸って、8秒かけて口から吐く。これを5~10回繰り返す
- 肩回し:肩を大きく後ろに回す運動。これで上背部の緊張がほぐれる
- 首と肩のストレッチ:右手で頭を左側に優しく倒し、右の肩から首にかけて伸ばす。反対側も同様に
- 妊娠中対応のヨガやピラティス:医師に相談した上で、妊婦向けクラスに参加することも有効
姿勢変更と休息の重要性
同じ姿勢を長く続けることは、特定の筋肉へ負荷をかけ続けることになります。
1時間に1回は体勢を変えるよう意識しましょう。
立ちっぱなしなら座り、座っているなら立つ、という変化が、筋肉の緊張をほぐすのに効果的です。
疲労を感じたら、我慢せずにすぐに横になって休憩することが、痛みの悪化を防ぎます。
妊娠中期のお腹上部の痛みで病院を受診すべき要注意症状
上述の対処法で改善しない、または以下の症状が伴う場合は、早期の医療機関への受診が必須です。
すぐに受診すべき危険信号
- 激しい痛みが持続する:時間が経っても全く改善されない、またはむしろ悪化する場合
- 嘔吐や下痢を伴う:食事に関わらず繰り返し嘔吐がある場合
- 発熱がある:37.5℃以上の体温。感染症の可能性が考えられます
- 下血や黒色便がある:消化管出血の可能性があります
- 視力異常や強い頭痛を伴う:HELLP症候群など重篤な合併症の兆候の可能性
これは妊娠中期~後期に稀に発症する重篤な合併症で、上腹部痛(特に右上腹部)、倦怠感、吐き気、視力異常を特徴とします。
肝機能異常と溶血を伴い、産母と胎児双方に危険があります。
上記の複数の症状が同時に出現した場合は、躊躇なく救急車を呼ぶか、即座に産婦人科を受診してください。
数日以内に受診すべき症状
- 痛みが食事と関係なく定期的に起こる
- 軽い痛みが数日以上続いている
- 通常の家事や仕事ができないほどの痛み
- 夜間に痛みで目覚めることが続く
診察時に医師が正確に判断するため、以下を準備しておくと良いでしょう:
• 母子手帳
• 直近の妊婦健診結果の用紙
• 痛みが起きた時間帯と症状をメモしたもの
• 基礎体温や体調変化の記録
妊娠中期のお腹上部の痛みは、正しい対処で大多数が改善します
妊娠中期にお腹の上の方が痛くなることは、赤ちゃんの成長と母体の変化の現れです。
子宮の拡大、ホルモン変化、便秘、胎動、姿勢の変化といった主な原因は、すべてが自然な生理現象であり、赤ちゃんへの直接的な悪影響は限定的です。
改善が期待できる対処法をおさらい
- 食生活の工夫:少量頻回食、食物繊維の摂取で消化負担を軽減
- 水分補給:便秘予防が最優先
- 姿勢の改善と軽いストレッチ:筋肉の緊張をほぐす
- こまめな休息:同じ姿勢を避け、疲労を溜めない
- 定期健診での相談:医師に症状を伝え、安心を得る
妊娠中期の研究が進み、特にホルモン変化と圧迫要因の理解が深まった近年では、生活改善により8割以上の妊婦さんが痛みを緩和できることが報告されています。
つまり、ほとんどのケースで「様子を見ながら対処する」ことが最適な対応なのです。
自己判断の危険性と医学の重要性
一方で、「このくらい大丈夫」と完全に自己判断することは、稀な重篤疾患を見落とすリスクがあります。
「ほとんど心配いらない」と「完全に放置して良い」は異なることを念頭に、疑問点は遠慮なく医師に相談しましょう。
妊婦健診の際に、症状の詳細を医師に説明することで、安心感と同時に、万が一の病気の早期発見にもつながります。
妊娠中期の痛みとの向き合い方 最後に背中を押します
妊娠という神秘的な時間を過ごしているあなたへ。
体の変化による痛みや違和感は、赤ちゃんが着実に成長している証です。
それは不快なものかもしれませんが、決して「異常」ではなく、多くの母親たちが通ってきた、いわば「通過儀礼」なのです。
この記事で紹介した対処法は、すべて赤ちゃんに害をもたらさない、安全で実践的なものばかりです。
食生活を少し工夫する、水を多く飲む、姿勢に気をつける、休息を大切にする——これらは、赤ちゃんだけでなく、あなた自身の健康を守る行為でもあります。
もし対処法を試しても痛みが続く場合、または不安を感じた場合は、迷わず医師に相談してください。
妊婦健診では「何でも質問していい」という環境です。
小さなことでもいいので、遠慮なく医師や助産師に話しかけることで、あなたの心身の負担は大きく軽減されます。
妊娠中期は、赤ちゃんの心臓の音がはっきり聞こえるようになり、性別がわかることもある、妊娠中でも特別な時期です。
少しの痛みや違和感に振り回されず、赤ちゃんとの対話を楽しむ時間を大切にしてください。
あなたの体は、今、人類が行う最も素晴らしい仕事を成し遂げています。
その過程での小さな痛みは、十分に対処できるものなのです。
前向きに、そして安心して、この素敵な妊娠生活を進めていってくださいね。